けいじばん10月

けいじばん10月

深山の

あれを見よ・・古歌ですね。古歌といわれる、古くから伝わる歌の中には、

深く人間の情操心を揺さぶるものがたくさんあります。

  咲く花の色香にまして恋しきは 人の心のまことなりけり

とかですね、

  見る人の心々にまかせおきて 高嶺にすめる秋の夜の月

とかですね、非常に感慨深いものがあります。

この、あれを見よ・・の歌も、私も若い頃から親しんできた歌でした。

「人の踏み込むこともない山中に・・それでも花は精一杯咲いている・・

誰も見てなくても、よいではないか、この人間世界の片隅にあっても、

自らを咲かせるのだ・・世を照らせ・・」というような、願いが伝わってく

るようです。今回この歌を見つめた時には、昔観た、大林 亘彦映画監督の

「ふたり」という映画の一場面がふと思い出されました。事故に遭い、亡く

なってしまったしっかりものの姉が、少し、生き方の不器用な妹を、幽霊と

なって現れ、付き添いながら見守っていく・・といった物語でした。その映

画の一場面で、一度は劇の主役に選ばれながらも、結局は裏方にまわされ、

友人たちの演ずる舞台の上から、桜吹雪を散らせる役割になってしまった主

人公の妹の横に幽霊の姉が現れます。慰めの言葉を掛ける姉に妹は、これで

いい・・ここからだと人生がよく見える・・と答えます。そんな妹に向かい

姉は、「あんたって娘は・・・」と胸を詰まらせながら、声をかけます・・

下に見える友人たちの演じる、ステージへと彼女は丁寧に桜吹雪を散らせ続

けます。

この「ふたり」という映画は、大林監督の「新尾道三部作」といわれるもの

のひとつであり、大林監督の出身地である尾道を舞台としたものです。

私も祖母の故郷が尾道ですので尾道には幼少の頃より・・・(まぁ、現在も

ですが)頻繁に訪れました。映画に出てくる場面はほとんど見おぼえのある

場所ばかりです。全編を通しても懐かしい感じがしました。

現実の生活の中でも、幾度となく、こうした人たちに出会います。いつで

したか、幾人かの講演会の会場の裏方で、音響と照明を担当されていた方も

そうでしたか・・その会場が穏やかな空気に包まれ、爽やかな彩の中で、

進行されていったことがありました。主催者の方は、講演者のことはもちろ

んでしたが、音響、照明を担当された方にも深く感謝の思いを告げられてお

られました。私は、担当された方のこともよく知っておりましたので、肯く

とこでありました。見る人は見ている・・とはよく言われることではありま

すが・・人だけではない、「」は隈なく・・照らし・・照覧しているとい

うことでしょう。

             南無阿弥陀仏

立位  赤紫  (566x800)

powered by Quick Homepage Maker 4.91
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional