ケイジ板12月

ケイジ板12月

浅き川は

令和2年12月29日


ようやくここまでたどり着いたか、と思えるような一年でした。

今年も、残すところ今日を含めて、あと三日のみです。何か波乗りのような

心境の一年であったと感じます。毎年・・といいましても、昨年も都合で行

けなかったのですが、何年間も続けておりました、鞆、尾道方面への海産物

の買い出しは、今年も行くことはできませんでした。不必要・・なことでは

ないのですが、外出はなるべく控えて、必要な事のみに専念する。そんな年

末にならざるを得ませんでした。幸いに十二月の予定もほぼ順調に終え、比

較的、時間を取り戻すことの出来た、本日でした。しかし、やはり、暮れの

寒気を身にしみ出すと、心には、鞆や尾道の情景が浮かんできます。


買い出し、ももちろん行いたいのですが、やはり師走の海辺の風情に出会い

たいものです。この時期、鞆では風物詩ともいえる「サヨリの一夜干し」が

海辺に銀色の細く美しい姿を海風に揺らせています。鞆の潮風で干された

「サヨリ」の美味なること、たいへん味わい深いものです。

店舗の中では、白い息をはきながら、誰もが穏やかながらも年末に向けて、

仕事にいそしみます。時にストーブの周りに集まり、熱いお茶などを口にし

て「朗らかなる時」をも感じながら。


数年前まではTさんも、この店舗の隣に店を出されていました。わりと長い間

そこで仕事をされていたような記憶があります。Tさんがお店をその道路沿い

から、少し中入った場所に移転されたのは、数年程前ではなかったでしょう

か。今ではそちらの方へ、行かしていただいています。だいぶ以前、若い頃

に一人でTさんのお店に「サヨリ」を求めに行った時、「お兄さん、これ、

食べてみぃ」とあがったばかりのエビを手のひらにのせてくれたことがあり

ました。まだ、ぴちぴちと跳ねているエビを、その場で食しました。

活きの良いエビの甘い香りが口の中に溶けていきました。何度かそのような

ことがあったと思います。それから、「サヨリ」はTさんのお店で求めるよ

うになりました。

そのほかにも「デベラ」「ゲンチョウ」「イイダコの煮つけ」、鮮魚など

その日、並べられているおすすめものなども購入しました。


Tさんの姿は、旅行雑誌などで鞆が紹介されている時には、よく見かけました

「サヨリの一夜干し」とともに、Tさんや、その仲間たちが、皆楽しそうに

写真に写っています。

実際の漁師町での生活は、私が思うほど生易しいものではないでしょう。

それは、厳しいものだと思います。しかし、お父さんがた、お母さんがた、

誰しもが、人懐かしさと爽やかさ・・そして力強さを合わせ持たれているよ

うに感じられます。


一昨年の暮れ、福山の友人とTさんの店を訪れました。生憎と「サヨリ」は

その日はもう、売り切れていました。その日は同じ一夜干しで、これまた

美味な「ゲンチョウ」と「小魚の煮物」を求めました。Tさんの店は人気店

ですので、今は年に数回ほどしか訪れない、わたしのことなど、本当に憶え

ておられるのか、不思議に思います。

それでもその時も「これ、食べてみぃ」とそれぞれの手ののひらに、福山で

は「チィチィイカ」とよばれる「ベカ」をのせてくれました。

やはり、「甘いかおりが」口の中をつつんでいきました。


どこにいっても、すぐに打ち解けて話せる場所はいい、打ち解けて話せ

る人々がいる場所はいい、気取らないのが一番いい・・・


瀬戸内海の・・波音の中に・・念仏を聞く・・

             南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏

立位  赤紫  (566x800)

        
        
           

         

powered by Quick Homepage Maker 4.91
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional